脆姫は過去に生きる
きっと悲惨な状態なのだろう。
鉄王はわざと私に見えないようにしている。

「・・・はっ・・・はぁっ・・・・ふっ・・・」
何となく状況が私はわかっている。


だって・・・
私の手を握ってくれていた富さんがいないから・・・


鉄王に遮られた視界の中で富さんの姿を探す。

「咲!落ち着け!ゆっくり息をするのだ。咲」
大きな手で私の背中をさすりながら、鉄王は医軍が来るのを待っている。

「とっ・・・富・・・さ・・・・」
その名前を呼んでも富さんは何も返事をしてくれない。
< 172 / 251 >

この作品をシェア

pagetop