脆姫は過去に生きる
「咲」
「・・・はい」
鉄王は立ち止まり私の方を見た。

「咲がこの世界の生まれではないとしたら、知っていてほしいことがある。」
私は鉄王に私がもといた世界の話をよくしている。

医療の事や国のこと。
流行病の事や衛生面のこと。
この世界で役立てるような情報は伝えるようにしている。

鉄王もあくまで想像でも、自分の生きる世界とは違う世界があることを知っているのだ。

「私の命もいつまで続くかわからないように、咲の命も、ほかの誰かの命もいつなくなるかわからない。そして、咲がもといた世界では助かる命も、この世界では救えない。この世の常、この世の無情だ。」
「それは違う・・・私のいた世界でも救えない命はある・・」
鉄平を思い出す。
< 184 / 251 >

この作品をシェア

pagetop