脆姫は過去に生きる
「咲さんを・・・」
「ん?」
ずっと言えなかったことを言うときが来たと思った。

「咲さんをみたの」
「え?」
明らかに少し動揺する鉄王。

「妊娠が分かった時、夢で咲さんを見た。・・・池に溺れたあの日・・・」
「・・・」
鉄王は私の顔を見つめる。
「私がこの世界に来た日・・・だと思う・・・」
鉄王は私の方を見つめたまま、何も言葉が出ないようだ。

「池に落ちた時、咲さんは目を閉じて、すべてを覚悟してた・・・」
「覚悟・・・?」
「鉄王と離れる覚悟を・・・」
私の言葉に鉄王はさらに動揺したように視線を外した。
< 186 / 251 >

この作品をシェア

pagetop