脆姫は過去に生きる
「誰よりも何よりも鉄王を大切にしていた咲さんの・・・」
「もういい」
体力が落ちている私にとって長く話をすることもかなり体力を消耗してしまう。
鉄王は私の呼吸が乱れ始めたことに気づき、私に視線を戻した。

「咲さんは・・・私よりも・・・鉄王を・・・」
「もう話さなくていい。体にさわる。」
「あなたを想って・・・・そのためには・・・命をあきらめる覚悟も・・・」
「咲菜」
鉄王が私をそう呼ぶのは初めてだ。
いつも戸惑いながら、咲と呼んでいた鉄王。
「咲菜、もういい。話さなくていい。わかったから。もう十分だ。」
「・・・咲さんの想いを・・・王の咲さんへの想いを・・・私が・・・」
奪った・・・。
壊してしまった・・・。

「違う」
最後の言葉を言えないまま、自分の呼吸を整え、涙をこらえることに必死になる私の目をまっすぐに見つめる鉄王。
いつだって私の考えをよみとってしまう鉄王には私の癒えなかった最後の言葉が聞こえているはずだ。
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