脆姫は過去に生きる
「目が覚めたか」
懐かしい声と懐かしいぬくもりで目覚める。
この瞬間をずっとずっと待っていた。

「また泣くのか？本当に泣き虫になったな。」
困ったように笑いながら鉄平が私の頬をなぞる。

「食事の時間だ。起きられるか？」
「・・・はい・・・」
体を起こそうとするとすぐに鉄平が私の背中に手をあてて、起き上がるのを手伝ってくれた。

そう言えば私の記憶の中の鉄平よりも、はるかに筋肉質な目の前にいる鉄平。
ほくろの位置も笑った時のえくぼも変わらないけど、体つきが違う。

大げさなほどに豪華なベッドの上に体を起こすと「今日はここで食べよう」と鉄平が部屋の重厚な扉の方へ向かった。
「食事の用意を」
扉の外に向かって鉄平が低い声を出すと、すぐにたくさんの人が部屋の中に入ってきた。
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