脆姫は過去に生きる
「動いてますよ?」
「どれ。・・・本当だ。」
今日も嬉しそうに微笑む。
「今からこんなにも愛おしいのだ。生まれたら公務どころではないな。」
「それは困ります。」
私の言葉に笑いながら鉄王は大きな熱い手で私のお腹を撫でる。

「体調は?」
「落ち着いています。」
「ちゃんと安静にしていると報告を受けている」
「もちろん。」
「ありがとう」
この時代に生きる男性にしては、鉄王はかなりまれな人だと知っている。
まだまだ女性よりも男性が優先される時代。
まして妊娠しているからと言って大切にされることは当たり前ではない時代。
生まれた子供を自分で育てない人も多い。

鉄王は絶対に生まれた子は遠くへやらないと心に決めているらしい。
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