脆姫は過去に生きる
「いけません。姫たるもの、王との食事は本来自室では失礼に当たります。なのに、こんな身なりのままとは、国の重鎮たちも許しませんよ。こうだから、反対派が」
年配の女性の言葉を鉄平がさえぎる。
「紅姫は体調が戻っていない。つらい経験をして精神的に参っているんだ。今日くらい許してくれ。私に免じて。」
王の言葉に年配の女性がうろたえる。

「着替えですね。大丈夫です。」
私は場の雰囲気を悪くしてしまったことに罪悪感を感じながら鉄平から離れてその女性の方に近づいた。

それに確認したいことがある。

「大丈夫か?平気か?めまいはないか?」
鉄平が心配そうにしているのを背に、私は身なりを整えに別室へと連れて行かれた。

別室は私の部屋から扉を開けてすぐ隣にある部屋。
おそらくここも私の部屋なのだろう。部屋中に服や靴など女性ものと思われるものであふれていた。
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