脆姫は過去に生きる
「どうなさいました？」
「何でもないです。・・・よかった・・・」
そう言いながら鏡に映る自分の頬をつねる。

「何をなさってるんですか。あとになったら困ります。本来王とはこのように簡単に会うことなど許されないのですよ？ましてまだ婚姻の儀も執り行っていないのに、自室に王を泊めるなど持ってのほかです。気を付けなければ再び脆姫と騒ぎ立てられますよ？」
「脆姫？」
「そうですよ。王は一途に紅姫との婚姻を重鎮たちに説得されていますが、紅姫のお体のことを知った重鎮たちは世継ぎを心配して紅姫との婚姻を阻止しようと必死です。今は何かがあればすぐに婚姻に響く時期。体調にも日ごろの行いにも十分気をつけなければなりません。多少体調が悪くとも平気にふるまって王との婚姻の儀まで過ごさなければ、王の努力も水の泡ですよ。」
何となく今の状況が読めてきた私。

ここはどこだか分からない。でも、鉄平と一緒に居られればそれでいいと決めた。
だから、ここのルールには従う。
ここの生き方を学び、生きていく。

そう決めた。
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