脆姫は過去に生きる
「これだけの災害だったのに、疫病がはやらないのは咲菜の知識のおかげだな。」
鉄王の言葉に首を横に振る。

私にできることは偉そうに意見するだけで、実際には今のこの世界で何をできるかを考えて実行に移すのは鉄王だ。

「私たちは二人でひとつだな。どちらが欠けてもこの世界の復興はなかった。」
「鉄王の力です。」
「この子の力でもあるか。」
ふっと笑う鉄王の表情が好きだ。

「愛しています」
少し照れながら言うと鉄王は顔をくしゃくしゃにして微笑んだ。
「先を越されてしまったな。愛してる。咲菜。」
私の体を自分の方に向けて鉄王は口づける。

愛おしさをお互いに込めながら、私たちは強く抱きしめあった。
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