脆姫は過去に生きる
鉄王は私の体をギュッと抱きしめる。
「ありがとう。咲菜。愛してる。」
何度も繰り返しながら。

私は愛する人の大きな胸の中で、ほっとしたのと、この命に合うまでの日々を思い出して涙を流さずにはいられなかった。

「立派な男の子ですね。」
私よりも先に鉄王が私たちの息子を抱いた。

「小さいな」
こわごわと小さな小さな息子を抱く鉄王。
その大きな腕の中でそれまで泣いていた赤ちゃんがふにふにとしながら手足を動かす。

「あったかいな」
今まで見た中で一番の微笑み。
その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。
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