脆姫は過去に生きる
そう願いながら私は鉄平の胸の中で目を閉じた。


「戻ろう。」
少しして鉄平は私の肩を抱くようにして、部屋へと促した。

「本来、王は婚姻前の姫の部屋でお休みになることなどあってはならないことです。それを紅姫の体調が心配だからと王は強行突破で一緒におられたのですよ?」
富さんに叱られながら私は夜を迎えていた。

王と会うときは一段と重たい何重にも重ねた服でも、王が離れると、少しだけ軽い服に着替えることができる。

長い私の髪をとかしながら富さんが話し続ける。

どうやら話が好きらしい。

厳しいことも言うけれど、どれも私のために言ってくれていることが伝わり、決して悪い人ではないのだと確信が持てた。
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