脆姫は過去に生きる
「知らせるなということですか?」
富さんの言葉に首を縦に振る。

「しかし我々は王から命じられています。紅姫に何かあれば必ず知らせるようにと。」
それでも首を横に振る私に医軍は少し眉間にしわを寄せて考えてから、「寝台にうつりましょう」と私の体を抱き上げようとした。


その時。

「咲っ!」
慌てた声が聞こえて来た。

その名で私を呼ぶのはこの世界にただ一人だと聞いたばかり。

そしてその声を私が聞き違えるわけがない。
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