脆姫は過去に生きる
「目が覚めたか?」
どこまでも優しい声でささやかれる言葉に、私は瞬きをする。

「よく頑張ったな。」
目の前には鉄平。

「・・・ごほっ・・・」
口の中が思ったよりも乾いていてむせた私に、鉄平がすぐに寝台から立ち上がり水を持ってきてくれる。

「起きられるか?」
「・・・」
小さく頷く私に、ふっと微笑んでから鉄平は背中に手をまわして起こしてくれる。
そして、水を私の口に近づける。

「・・・けほっ・・・けほっ・・・」
うまく水を飲めない私に、鉄平は背中をさすりながら自分の口に水を含んだ。
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