脆姫は過去に生きる
富さんに聞いた話。
王は国中の貧しい地域から姫を城に呼び、この姫たちが集まる殿に集めているという。
戦いを増やさないため。国の秩序を守るための手段になっているのだろう。
だからこそ、さらなる安定のために、自国の安泰のために、姫たちも必死なのだ。

私は顔をあげられず、少しうつむいた。

「王への尊敬と感謝の気持ちは忘れたことはありません。しかし、今のままでは何も変わらない。私は自国のために命をささげる覚悟でここに来たのに、このようにのうのうと生活をしているだけでは、国の役になれません。それは生きながら死んでいるようなもの。」
菊姫の強い思いが痛いほどに伝わる。
「失礼を承知で、向かいます。王とのお子をもうければ、私は初めて生まれた国の役に立てる。」

私が生きていた世界とは全く価値観も違う。生きて来た環境も、歴史も違う。

私はこの命をささげる覚悟が本当にあるのだろうか。
ただ、一緒に居たいとあがいているだけじゃないか。

そんな葛藤と、姫たちの強い思いに時々心がつぶれそうになる。
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