脆姫は過去に生きる
「何も背負わず、何も役にたたず、足かせにだけなっているのに、王のお気持ちに寄りかかっているだけの誰かとは違います。」

私のことだ。

私には背負っているものがない。
ただ幼なじみというだけで、私が姫になって利益の出る国もなければ、防げるいさかいもない。
むしろいさかいのタネでしかない。

「よく、ここに居られますね。」
直球で投げかけられた言葉に、私は菊姫の方を見る。

ごめんなさい。

心の中で何度も謝りながら、菊姫からせめて目をそらさないことが私の精一杯だ。

「紅姫、そろそろ」
絶妙なタイミングで助け舟を出す富さん。
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