脆姫は過去に生きる
水面にうつる自分の姿を見ていると、その後ろに誰かが立ったのが見えた。

「この前は言いすぎました。無礼をお許しください。」
振り返ると、そこにいたのは菊姫だった。

いつものような強気な顔をしていない。
少しやつれたようにも見える菊姫は思いつめた顔をしている。

「いいえ。私にも責任があります。心当たりがありすぎて、何も言えませんでした。」
謝るわけにはいかない。
私が今菊姫に謝ったところで、何も彼女の慰めにならない。
むしろ嫌味に聞こえてしまうかもしれない。

「御影に叱られました。言葉が過ぎると。」
「御影さんに?」
「えぇ。今王は私の国のために戦場へ行ってくださっているのに、ほかの姫のことを言える立場にないと。確かに図星です。」
菊姫は池の水を見つめた。
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