脆姫は過去に生きる
王は私と菊姫の前で止まった。

「菊姫」
低い声で鉄平が菊姫をみながら話始める。

「はい」
菊姫は頭を下げて話を聞いている。

「すまない。国民の育てた土地の被害はかなり大きかった。守り切れず、申し訳ない。」
「とんでもございません。お命を懸けてお守りくださり、本当にありがとうございます。」
「そなたの守るものの大きさを私は初めて見た。見もしないで守る気になっていたのは自分が自分の地位におごっていたからだ。」
「もったいないお言葉です。」
「結局戦は抑えきれなかった。すまない」
その言葉に状況がつかめた。

今回戻ってきたのは決して戦が終わったからではない。
ただ、失った兵力や、傷ついた兵の多さに、一時撤退してきたのだ。
< 85 / 251 >

この作品をシェア

pagetop