脆姫は過去に生きる

「王として恥じるべきだな。そなたのために戦を収めたと報告したかった。」
鉄平の言葉には重みがある。でもその重みの中に大きな切なさや悔しさを感じる。

それだけで私は涙が止まらない。

せめて泣いていることが誰にも気づかれないように雨で流されることを願った。


「王にそのようなお気持ちを持っていただけただけでも感謝の気持ちでいっぱいです。感謝しております。何にも役にたたないこの命をささげる資格すら私にはない。汗を流して必死に土地を育てることも許されない。生きていることがこんなにも苦しいことだとは思いませんでした。」
「何を言っている。」
菊姫は頭をあげて、鉄平をまっすぐに見つめた。

「もう、そのようなお気持ちはお捨てください。いいのです。これ以上、王や兵たちに傷を負わせるわけにはいきません。十分です。」
その言葉に私は嫌な予感がして、視線を菊姫に移す。