脆姫は過去に生きる
「たくさんの兵を傷つけ、命を奪ってしまった罪。そして王の心に負担をかけてしまった罪は大きい。この命に代えて償います。」
そう言った瞬間菊姫は胸元から短剣を出して、自分の胸に突き立てた。

暗くて少し動きが遅れてしまった私。

鉄平もすぐに乗っていた馬から飛び降りて菊姫の動きをとめようとする。

少し暗闇に光ったものに飛びついた瞬間、鈍い音とともに、菊姫の胸に短剣が刺さっていた。

伸ばした手は空中を空回る。

「菊姫っ!」
重い鈍い音とともに、菊姫の体が地面に倒れる。

私はすぐに菊姫の体を抱き留めようとした。

雨を吸い込んだ服は重く、一緒に倒れそうになる体をすかさず鉄平が抱き留めて、菊姫と私の体を支えた。
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