脆姫は過去に生きる

第4章 ～試練～

「咲」
その声に視線を向ける。

私は何も言えないまま、鉄平の大きな大きな胸に飛び込んだ。



ついさっき・・・菊姫は亡くなった・・・


助けられなかった。

急所に刺さってしまった短剣。
鎮痛薬のないこの世界では、痛みに苦しみ死ぬ瞬間を待つよりも、誰かがその苦しみから解放するために命を終わらせる選択も多いらしい。

菊姫が痛みに苦しむ姿をみていた一番の世話役の女官が、最後は菊姫の胸に刺さっている短剣を深く深く刺し、菊姫を楽にさせた。