余りもの王女は獣人の国で溺愛される
プロローグ

 今日私は復習のようにマナーの講義を終えると、隙間時間で作成し一ヵ月ほどため込んだ刺繍のハンカチをたくさんバスケットに詰めて王宮から一番近い教会の孤児院を目指す。

 人族の住む国マテリカ王国は、周辺との穏やかな国交と豊かで肥沃な土地を持った科学と技術の発展した農工に強い国である。

 そんなマテリカの現在の国王には正妃が一人と側妃が二人いる。
 正妃は国内の高位貴族から、側妃は近隣の国の王族の姫が嫁いでおり、そのおかげか周辺国とも友好的な関係を築いている。

 国王には正妃に第一王子と第二王子に第二王女。
 第一側妃に第三王子と第一王女。
 第二側妃に第三王女。
 六人の子どもがいる。

 後継者は第一王子で、王太子として既に周知されている.
 第二王子は王太子の補佐として事務官となり、すでに父親に習い王太子と一緒に内政を勉強しつつ、様々な政策も打ち出している。

 第三王子は肉体派ですでに騎士団に所属しており、団長にしっかりしごかれつつ仕事をしている。


 第一王女は母親である第一側妃の国の貴族家へ嫁ぎ、第二王女は国内の侯爵家へとすでに嫁いでいる。

 現在、王宮に残っているのは兄である三人の王子と末っ子の第三王女。
 つまり私、マジェリカ・ディ・マテリカ十八歳のみである。

 王族として、マナーや勉学も修め隙間で手慰みに作った刺繍のハンカチを孤児院のバザーに寄付し、売り上げはそのまま孤児院の運営に少しでも役立ててもらっている。
 父が王位を継いだ十三年前まではまだまだ周辺との関係は落ち着かず、孤児が多くなったそうでマテリカには教会には必ず孤児院を設ける運びとなった。





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