余りもの王女は獣人の国で溺愛される
宴の準備が出来たと知らせがきたのは、サロンで話をして少ししたころ。
使節団との会議が想定より早く終わってしまったので、準備時間が短くなり皆大変だったと思う。
それでも、あまりお待たせするのは良くないと頑張って準備をしてくれたのだろう。
マテリカの王宮で働く人々は、優秀な人々が多く感謝しなけれなならない。
父とティアナ様を筆頭にアラル様と母に兄たちが続き最後に私が出る。
サロンの片付けに来たメイドたちに、私は一声かけた。
「今日は忙しいでしょう? 頑張ってくださってありがとう。 休めるときに休んで、無理をしないように」
そんな私の声掛けに、メイドたちは振り向くと頭を下げて返事をくれた。
「姫様、もったいなきお言葉にございます。お気を付けくださいませ」
送り出してくれた彼女たちに、私はありがとうと返して宴の行われる広間に向かった。
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「本当にうちの末姫様は、周りをよく見てくれて、労いの言葉まで掛けてくださる。出来た方だわ」
サロンの片付けをしながらメイドの中では年嵩の者が口にすれば、一緒に働く若いメイドも頷いて同意する。
「本当に姫様は、お優しく、賢く、気遣いのできる素晴らしい姫様です。姫様がお幸せになられるのが、我々王宮で働く者の願いです」
本人は特別なことはしていないと思っているし、与えられることが当たり前ではないと母に躾けられてきた成果でもある。
王宮で働く者に、いつも労いと感謝の言葉を掛ける末姫は、侍女や侍従以外にも下働きの者達にまで人気が高かった。
皆に愛されている姫なのだが、そのことを本人だけが分かっていない。
そんな姫様の行く末が幸せであるようにと願うのは、使用人たちの常なのであった。