余りもの王女は獣人の国で溺愛される
宴を終えてから、王女宮に戻るとすでに普段裏方に回ってくれているメイドや侍女見習い数人が私の移住と結婚のための準備に奔走していた。
「姫様、おかえりなさいませ。少し、せわしなく申し訳ございません。サーシャが今入浴の準備をしておりますから、少々お持ちください」
私の部屋に、久しぶりに来たであろう侍女頭がしっかりと見習いやメイドへと指示を出して荷物をまとめていた。
「王家から、姫様が嫁ぐという素晴らしい慶事ですのに準備期間が短いですわ。せめて、もう二日下さればもっといろいろと準備して姫様を送り出せますのに」
侍女頭は少し悔しそうにしつつも、その手も口も休ませることなく準備に采配を振るっている。
「ごめんなさいね、こんなに急で。皆に負担をかけてしまうわね。どうか、私と使節団が出発したら皆に休みを与えてやって頂戴ね」
私の言葉に侍女頭のリリーは頷いて、答えた。
「もったいなきお言葉です。みな、聞きまして? 姫様のため、二日後の出立までに絶対に準備を整えるわよ!」
リリーの言葉に、部屋で準備に動いていたみんなは更にやる気を出してくれたようだ。
こんな急なのに、文句も言わずに準備してくれてありがたいなと思う。
入浴の準備が整ったとサーシャに呼ばれて、私は入浴を済ませることにしたのだった。
明日は婚礼衣装の試着だという。
ティアナ様やアラル様に母のお針子総動員で、今夜中に婚礼衣装を仮まで仕立て上げると豪語していた。
本当に各方面にかなりの無理を強いてしまうのが申し訳ないが、母たちみんなが婚礼衣装は絶対に持たせると決めてくれたおかげである。
ありがたいなと思いつつ、私はここ数日の準備の疲れもあって入浴を済ませて寝支度ののち早々と就寝したのだった。
明日も、忙しいのは間違いがないので。