余りもの王女は獣人の国で溺愛される
翌朝、早めに起きて朝の身支度と軽い食事を済ませると部屋には母たちのお針子が目にクマを作りながらやってきた。
部屋に持ってこられたドレスは、可憐で美しいの一言に尽きた。
素晴らしく美しい婚礼衣装だった。
私は鏡の前で自身に当てられたドレスを眺めて、思わずつぶやいた。
「素敵ね。こんな衣装を皆で準備してくれて……。急に仕立てろなんて、大変だったでしょう」
鏡に映るのは、ストロベリーブロンドに琥珀色の瞳で純白にキラキラと輝くドレスを身に着けた私だった。
ウエストラインで切り替えられたフレアの美しいロングドレスに、繊細なレースを施したベールは立派な婚礼衣装だ。
第三王女に作られた、式典用のティアラも久しぶりに載せられて首元もそれに合わせたネックレスだ。
「姫様、大変お似合いですわ。さすが、エミーシャ様のデザインです」
その言葉に私は目を見開いた。
「お母様のデザインなの?」
私の問いかけに、母のお針子の一人がにこやかに答えた。
「そうです。エミーシャ様は一年ほど前からマジェリカ様がいつ嫁いでも問題ないように、婚礼衣装のデザインを考えておりましたから。ですから、今回こんなに早く仮仕立てが出来たのです」
もうすぐ娘が結婚すると見越して、母は婚礼衣装について考えてくれていたようだ。
「そのデザインを見て、ティアナ様がドレス用の石をアラル様がレースをご用意くださいました」
お針子たちのまとめ役の、ベテランのお針子マールは言った。
「妃さま方、皆さんで最後の姫様を送り出したいと。このような形になりました」
ドレスの形はシンプルだけれど、生地も飾りの石もレースも今までで一番豪華だ。
母たちの気持ちがこもった衣装に、感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。
「母やティアナ様たちにお礼申し上げなければ。みんなも、こんな期間で仕上げるなんて大変だろうけれど、このドレスが良いわ。この後の作業もお願いね」
私の返事にお針子の面々は頷いて、仮止めしたドレスを脱ぐとまた一気に荷物をまとめて作業へと戻っていったのだった。