余りもの王女は獣人の国で溺愛される
第三章
翌日、しっかりと食事を取り身支度を済ませたあとでギャレリアへと移動する人員は王宮の前庭に集まっていた。
先日竜人であるリヒャルト様とルーアンさんが降り立った場所である。
竜人であるお二人に移動をお願いしていたが、具体的にどのように運ばれるか実はしっかり聞いていなかった。
私は目の前の光景に、ついつい驚きを露わにしてしまった。
私の目の前には、それはそれは大きな持ち手の付いた籠が二つあったのだ。
「あの、もしかしてこれに乗って私たちは運ばれるの?」
そんな私のつぶやきに側にいたエリナが言った。
「えぇ。竜人が竜型で人を運ぶにはこういった大きな籠を使うのだそうです。竜の背に乗るのは、相当鍛えていないと無理なのだそうですよ」
目の前には黒い竜と黄金の竜が並び立っている。
その体高は、王宮の三階のバルコニーにも届くほどに高いのだ。
しかし、首が長く胴体には立派な翼をはためかせている大きな竜の体に乗るのは、確かに無理だと理解できる。
だって、掴まるところなんてないのだもの。
綺麗な鱗で滑って落ちる未来しか見えない。
この背に乗ってきたエーレインさんは、かなりの身体能力の持ち主なんだなと、身近で竜をしっかり見て納得した。
「マジェリカ王女。此度は一緒に籠に乗りますことをご了承ください。ギャレリアの護衛武官のエーレインと申します」
しっかりと騎士の礼で挨拶をしてくれたエーレインさんに私は返事をする。
「私は初めての国外への移動ですので、至らぬこともあるかもしれません。こちらこそ、よろしくお願い致します」
私が乗り込む籠には柔らかそうな絨毯とクッションが敷かれたコーナーがあり、その脇には多くの箱が乗っていた。
私の嫁入りの品々だろう。
それで、籠が埋まりかけるのだから結構沢山荷物を詰めてしまったようだ。
お兄様たちが乗るルーアンさんが持つことになる籠より重くなりそうで、リヒャルト様に申し訳なく思っていた。
すると金の竜がその首をめぐらせ、顔を私の前に差し出した。
その瞳は大きいけれど、人型の時のリヒャルト様と一緒で綺麗なアイスブルーだ。