余りもの王女は獣人の国で溺愛される


 いきなりの登場ながら、国王陛下にも挨拶をした私は侍女頭だと紹介されたニコラさんに先導されて王宮内を移動中だ。

 中は広く、高い天井には美しい照明が飾られていてキラキラと輝いている。
 ところどころに花々も飾られていて、華やかだ。

「こちらで少々お待ちくださいませ」

 案内されたのは、王宮へのお客様用の控えの間と思われる場所。
 控えめながら美しい調度品で整えられた空間は、花と茶菓子がすでに用意されていた。
 ソファーも座り心地が良くて、知らずに力が入って疲れていたらしい身体が一心地着いた。


「ただいまリヒャルト様の離宮を整えておりますので、晩餐会まではこちらでお休みください。今夜から離宮でお過ごしになれるよう、準備しております」

 どうやらサーシャもそちらに行っているらしい。
 私の持ってきた荷物の整理もあるだろうし、サーシャに任せればしっかり整えてくれるだろう。
 リエナはもちろん私と一緒で現在は控えの間で、少し離れて待機中だ。


「離宮は王宮から近いのですか?」


 私の質問にニコラは頷いて答えてくれた。


「えぇ。こちらから見えますので、良かったら」


 控えの間のバルコニーに案内されて、外を見れば白い王宮よりは小さな建物が見えた。


「あちらが離宮でございます。 王のご兄弟がいらした場合はあの宮が与えられます。現在はリヒャルト様のみお住まいです」


 ほかにご兄弟はいらっしゃらないということなのかな?
 とりあえず、私は外交官だが王弟でもあるリヒャルト様の番としてギャレリア王国の王宮敷地内の離宮に住むことは決まったみたいだ。

 王宮内だし、きっと安全だろうと思った私の頭上に大きな影が出来る。

 見上げると、そこには大きな黄色の竜がいた。
 

< 23 / 55 >

この作品をシェア

pagetop