余りもの王女は獣人の国で溺愛される
そして、大きな黄色の竜の後ろからは同じ色の小さな竜も顔を出している。
「あら、もうお客様が到着していたのね。私ったら、うっかりお出迎えに遅刻してしまったわね」
黄色の大きな竜からは、穏やかな女性の声がした。
「ママ、お客様到着したのね! わぁ、とっても可愛いお姉ちゃんだね」
小さな黄色の竜からは、小さな可愛らしい女の子の声がする。
もしかしなくても、リーデンベルグ陛下のお妃さまにご息女さまなのでは?と思い至る。
ここに来る前に突貫でマテリカの外交官から聞いていた。
リーデンベルグ陛下には番のお妃さまとその間に王女様が一人いるのだと。
私はマテリカ風にはなるが、ドレススカートをつまんで持ちご挨拶をさせていただく。
「私、マテリカ王国第三王女、マジェリカ・ディ・マテリカと申します。ギャレリア王国の王妃様と王女様とお見受けいたします。 バルコニーからのご挨拶で、申し訳ございません」
頭を下げた私に、お二人は竜体でおろおろとしている。
「あぁぁぁ、ごめんなさい。ちょうどリンの飛行訓練の途中で寄ってしまったから。こちらこそ、竜のままで突然押しかけてごめんなさいね。私はギャレリア王国王妃、リーリヤ・ギャレリアよ」
あわあわと、落ち着かなかったのも少しの間で、王妃様は竜体のままでも丁寧にご挨拶してくださった。
「お姉ちゃん、初めまして。私はレーリン・ギャレリアです!」
可愛い声の王女様は、竜体でこちらにやってきて私の頬細い顔先を向けてチュッとご挨拶してくれる。。
「レーリン様、初めまして。 こんなに近くによろしかったのでしょうか?」
私はレーリン様に声を掛けつつ、後ろに控えてくれていたニコラに問いかける。
「お珍しい事ではありますが、レーリン様が自らマジェリカ様の元へ向かわれたので、そのままで大丈夫ですよ」
ニコラの返答に少し安心しつつ、子どもで小柄なレーリン様を撫でさせてもらう。
艶やかな鱗は少しひんやりしていて、つるつるしている。
「お姉ちゃん、人型になっても遊んでくれる?」
そんな可愛い問いかけに、私はしっかり肯定を返して一旦離れることとなったのだった。