余りもの王女は獣人の国で溺愛される

 
『コンコン』


 控えの間で待っていると、外からドアをノックする音がした。


「マジェリカ王女様。準備が整いましたので、謁見の間までご案内いたします」


 迎えに来てくれたのは、ギャレリア王国の騎士さんだ。

「お初にお目にかかります、近衛騎士のウォーレンと申します。今後も護衛に就くこともあるかと思いますのでお見知りおきを」

 丁寧な挨拶を受けて、私もしっかりと答えた。

「まだギャレリアに来たばかりで至らぬところも多いですが、よろしくお願いします」

 王族であるので、頭を下げることはしないものの丁寧に返したと思う。
 そんな私にウォーレンさんは少し驚いたようだけど、微笑むと私を先導して謁見の間へと案内を始めてくれた。

 ギャレリアの王宮はとにかく天井が高い。
 なので階段の段数も多めだ。
 そんな私がいたのは二階だったから、そこに顔を出してくれた王妃様と王女様はしっかりと飛んでいたことになる。

 しかも、滞空していたのだから飛行訓練中だという王女様もすでにしっかり空を飛べるのだろう。

 一階に降りて、大きく作られた窓の外を見て私は思わず呟く。

 「竜族の方々はご自身でこの空を飛べるのですね。 天気のいい日はきっと気持ちが良いでしょうね」


 先を行くウォーレンさんはそんな私の呟きを微笑まし気に聞いたらしく、穏やかな返事が返ってきた。


「竜族だけでなく鳥の一族も空を飛べますよ。 実は私は鳥の一族なので、竜族とはまた違いますが飛べますね」


 人型だとなんの種族の方か分からないのだけれど、ウォーレンさんは鳥の一族だったよう。

「確かに、そうですね。鳥の一族の方の姿もそのうち見られるでしょうか? 楽しみです」

 そんな私の返事を周囲に居たギャレリアの人々は、なんだか嬉しそうにしている。
 私にはそれがどうしてなのか分からないけれど、喜んでくれているのなら良いのかなと思うことにした。


 そうこうしている間に、私は謁見の間へとたどり着いた。
 部屋の前には、先ほど別れたリヒャルト様も待っていてくれた。
 一人で謁見の間に入るのではないことに、少しホッとする。
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