余りもの王女は獣人の国で溺愛される
離宮の二階にある一番奥のお部屋。
王宮内の森に近い部屋は日当たりもよく、眺めも落ち着いたいいお部屋だった。
中の家具は温かみのある木目が落ち着くもので、ソファーもテーブルも、クロスやカーテンまで薄目の水色で、絨毯はベージュ。
明るい雰囲気の、いいお部屋だ。
「気に入ってくれたかな?」
一緒に部屋まで来てくれたリヒャルト様は、少し緊張した表情で私の返事を待っている。
「温かみもあって、でも明るさもある。雰囲気は落ち着いていて、過ごしやすそうです。ありがとうございます」
部屋を見た後、微笑んで答えた私にリヒャルト様はホッとした顔をした。
「隣は私の部屋だから、なにかあればすぐに駆け付けるよ」
お隣はリヒャルト様のお部屋!?
「ここは歴代王弟夫妻の部屋だからね。いままで私に番が見つからず、空室だったけれど。マジェリカが見つかって、来てくれたからね。 離宮のみんなが、君を歓迎しているよ」
その言葉通りなのか、夕飯はマテリカ風で慣れ親しんだ味を離宮の料理長さんが用意してくれた。
部屋に戻れば、侍女やメイドさんが楽しそうにお仕事しているし、着替えや入浴の手伝いもテキパキと動いているのに、表情は生き生きと楽しそう。
あまりにも楽しそうなので、私は聞いてみた。
「みんな、とても楽しそう。 私一人増えただけなのに、どうしてかしら?」
そんな私の口をついて出た疑問には、ついててくれた二コラが答えてくれた。
「ここは長らくリヒャルト様のみで、お世話することも少ないうえに、お仕事で不在も多かったのです。 そこに、ようやくお世話のできる番様が来られて。皆、仕事にやりがいを見出したのです」
二コラは本当に嬉しそうで、そして微笑みながら告げた。
「番様がいらっしゃったのなら、近いうちにお子様も増えて離宮は賑やかになりますもの。みな、楽しみでやりがいも出ているのです。 マジェリカ様は、それを見守り楽しんでいただければ」
どうやら、人族であっても番としてきた私はここでは歓迎されているらしい。
みな優しそうで、よかったと安心していると外からノックがして二コラが対応する。
「マジェリカ、少しいいかい?」
その声はリヒャルト様で、私にリエナは慌ててガウンをかけてくれて準備した旨を二コラに視線で答えると、二コラは部屋のドアを開けたのだった。