余りもの王女は獣人の国で溺愛される
「ごめんね、こんな時間に。まだ起きていた?」
リヒャルト様の問いかけに私は頷き、答えた。
「ちょうど支度をしておりました。まだ、眠る前でしたので大丈夫です」
私の返答に、ホッとした表情を浮かべた後にリヒャルト様は私への言付けだと驚きの話を持ち出した。
「実は、明日は王妃主催の茶会が王宮の庭園で行われるんだ。 そこに、マジェリカも参加するようにと、義姉上から言われてね」
なんとギャレリア王国についてすぐに、国で一番高貴な女性のお茶会参加を決定されてしまった。
リヒャルト様の番としてこの国に嫁ぐのだから、お断りできるはずもなく私の返事はハイの一択のみなのである。
「わかりました。 まだギャレリアに来たばかりで慣れぬゆえ粗相もあるかと思いますが、参加させていただきますとお伝えください」
私の返事にリヒャルト様は、一つ頷くと私の寝るために下ろしていた髪をひと房つかむと口づけを落として言った。
「あぁ、しっかり義姉上には伝えておこう。 何かあったら、俺の名前をしっかり出すんだよ。大丈夫だとは思うけれど……」
私が王妃様のお茶会に参加するのを、少し心配なのだろうことがうかがえる。
でも、心配はいらないのだ。
一応、これでも隣国の王族の姫だったのだから。
社交の乗り切る方法くらい、身に着けている。
困るのは、マテリカとギャレリアにおける礼儀作法の差だけで。
明日は早起きして、二コラに最低限のマナーを教えてもらわなければ。
明後日からの授業より前に、必要な場面が出来てしまったのだから仕方ない。
「義姉上にはしっかり伝えておくから、マジェリカなら大丈夫だよ。それじゃあ、また明日」
「はい。お休みなさいませ、リヒャルト様」
リヒャルト様をお見送りして、私はさっそく明日のための指示を二コラとリエナに出して、明日の茶会に備えて早めに就寝することにしたのだった。