余りもの王女は獣人の国で溺愛される
「マジェリカ様のハンカチは、綺麗な刺繍でご近所の皆様に大人気なのです。いつもすぐに無くなってしまうのですよ」
そんなシスターアリアに私は微笑んで答える。
「私の少しの手慰みが皆様の役に立てているのなら良かったわ。 シスター、なにか不足はない? なにかあればいつでも言ってください。 王家として、支援いたします」
私の言葉にシスターアリアは、少し困った顔をして言った。
「ここは王都ですし、王宮の側なのでご支援も多く不足はございませんわ。 ただ、知り合いの辺境の領地の教会のシスターが最近物資不足で困っていると……」
ここは教会の中でも本部であり地方の状況なども情報として届く。
その情報から地方へも物資を輸送したり、年に一度はお母様や王妃様が視察にも出向かれている。
「そうなのね。その情報まとめて王宮へと届けてくだされば。早急に対応させていただきます」
私の答えに、シスターアリアは安心の表情を浮かべた。
「マジェリカ様が定期的に訪れてくださるようになって、地方の孤児院もかなり環境が改善されました。 とても助かっております。 ありがとうございます、姫様」
そんな時、施設で一番大きな男の子が寄って来て私に尋ねた。
「マジェリカ様。 今度、ギャレリア王国からお客様が来るって本当か? ギャレリア王国は、動物の姿にもなれる人の国なんだろう?」
私が成人した三年前から、この孤児院に通うようになったときに読み書きや簡単な計算、周辺にある国などについても時間の許す限り話して聞かせてきた。
この子もどうやら、その時に話したギャレリア王国のことについて覚えていたらしい。
「えぇ、今度使節団が王宮へとやってくるらしいわ。 かの国はオーリが言った通り獣人の王国でマテリカとは違って魔法の発展した強い王国よ」
私の話に、オーリは心配そうな表情で聞いてきた。
「そんな国が来るなんて……。怖い事にはならないよな?」
それに、私は安心させるように微笑んで答えた。
「友好のための使節団だと、私は陛下とお兄様に聞いているわ。大丈夫、陛下は戦争を起こさないために最善を尽くしてくださるから」
私自身も唐突に決まった今まで国交のなかったギャレリア王国の使節団訪問は、少し不安もある。
しかし、国のいざこざで親を亡くしたりした子たちがこの場で不安にさせる言葉など言えようはずもなかったのだった。