余りもの王女は獣人の国で溺愛される
そうして磨かれること二日。
結婚式の当日の朝は、いい天気だった。
朝日が昇る頃から、仕える者たちは忙しく立ち回っている。
私自身も、いつもより早めに起きて食事を済ませたら一気にまた身を磨かれたのちに婚礼衣装を身に着けていく。
装飾品に、髪型、化粧まですべて整うと、自分でもまぁ見られるかなと思えるくらいには綺麗になった花嫁さんがそこにいる。
そうして準備の終わった控室に兄がやってきた。
「こんなに綺麗なのに、父上も母上も見られないんだな」
私の花嫁姿に、兄は少し感慨深く寂しそうな顔を見せたがすぐに笑顔を浮かべてその手を差し出してくれた。
「さぁ、お前を一等大事にしてくれる花婿殿が待ってるからな」
兄に先導されて、ギャレリア王宮の敷地内にある大聖堂へと馬車でたどり着いた私と兄は現在大聖堂前の大扉が開くのを待っている。
大聖堂の大扉の前に控えるのは、竜族であろう騎士二人。
「マジェリカ様、おめでとうございます。うちのリヒャルト様を、どうかよろしく」
にこやかな笑顔で、そんな言葉をもらい私は嬉しくなる。
「はい。これからも皆様、末永くよろしくお願いいたしますね」
そう返事をして、少し。
大聖堂の大扉が開く。
聖堂は大きく、その空間は何体もの竜人族が竜のまま入れそうなほど。
それでも、今回の結婚相手が人族であるため人型で参加してくれている。
祭壇までの距離が長いが、それを一歩ずつ進んでいく。
祭壇の前のリヒャルト様は、グレーの王族の盛装をきっちり着こなし微笑みを浮かべて待っていてくれる。
大きな聖堂を祭壇までたどり着くと、お兄様は私の手をリヒャルト様へと差し出しつつ言う。
「うちの可愛い末の秘宝。大切にしてくださいよ」
二人目の側妃の一人娘。
いてもいなくても代り映えのしない自分。
ただ、母の国の安寧のために母は嫁ぎ自分を生んだ。
しっかり育ててもらったとは思う。
母も愛情をかけてくれた。
それでも、自国での自分はいてもいなくても変わらない三番目の残り物姫だった。
そんな私を兄は秘宝だという。
兄弟にも大切にされていたこと。
ここにきて気付いた私は、鈍いのかもしれない。