余りもの王女は獣人の国で溺愛される
「えぇ、必ず。生涯にわたり慈しみ、守り愛し続けます。やっと見つかった私の大切な番ですから」

 リヒャルト様はいい笑顔で兄の言葉に応えてくれた。

 そして私はリヒャルト様の隣に並び、祭壇の前に立つ。
 そこには大聖堂の大司祭様がおり、穏やかな笑顔を浮かべて私たちに向き合ってくれる。

 結婚の誓いの言葉が問われて、リヒャルト様は迷いなく返事をしてくれる。
 私もそれに倣うように、すぐに返事をした。
 きっと大丈夫。
 出会ってからずっと、リヒャルト様は優しいもの。

 こうして無事に結婚の誓いを終えると、竜人族特有の竜鱗の誓いとして竜人族同士だと鱗を交換するらしい。
 しかし、私は人族なので鱗がない。
 それでも渡したいというリヒャルト様の希望で私だけが受け取る形で、リヒャルト様の綺麗な金の鱗をいただいた。
 それは、私の左手の甲にピタッと収まりしっかりと皮膚と一体化した。

 自身の鱗が私の左手に収まったのを見ると、リヒャルト様はとても満足そうに微笑んだ。

「愛しい、リカ。私の命の限り守り共に歩みましょう。愛しています」

「はい。末永く、ルト様と共に……」

 私も笑みで答えるとリヒャルト様は、バッと私を抱きかかえて大聖堂の中を外に向かって歩いていく。
 そこに、列席者からのフラワーシャワーを浴びて外に出ると騎士や城に使える人々が大勢詰めかけていた。

「リヒャルト様、番様と末永くお幸せに」

 そんな人々の声と、再びのフラワーシャワーは晴天に映えてとても綺麗だった。

「私の番は、本当に可愛くて綺麗で困りますね」

 私を抱き上げたままのリヒャルト様は、私にそうささやいてそして見守る人々を前にキスをしたのだった。

 それは、柔らかく温かく、そして甘く胸をキュッと締め付けて……。
 私の頬を赤く染め上げた。

「ルト様も、美しくてかっこいいので困ります……」

 私の素直な言葉を、リヒャルト様は受け止めて喜んでいる。

「番にそんな風に見られていると知ったら、たまらないものがありますね」

 そんな言葉と共に、来てくれた人に手を振った後は馬車に乗り、一気に離宮へと戻る。

 結婚式を終えた私たちは、獣人族特有の蜜月期を迎えることになっているから。



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