余りもの王女は獣人の国で溺愛される
結婚式の三日前。
私は二コラとリーリヤ様の二人に、竜人族の蜜月期について習った。
人族と獣人族では、そもそもの結婚観念が違うこと。
その後の過ごし方も、獣人族は種族によってまちまちだが必ず蜜月期があること。
まず、マテリカみたいな側妃は絶対にないこと。
獣人は番としか結婚しない、一夫一妻制だから。
そして、獣人たちは番と無事に結婚の誓いを行うと蜜月期に入る。
つまり、ハネムーンなどにも行かずに自分たちの住処にこもって二人で過ごす期間だという。
その期間の長さは種族ごとに違うらしいが、竜人族は最短でも一か月は住処に籠ってしまうという。
その間は、ほとんど離れず番同士べったりとした生活になるという。
マテリカでも一応夫婦のことについては学んだけれど、それ以上に想像もつかない環境になりそうなことがリーリヤ様と二コラの説明から判明した。
「一か月も、籠ったままなのですか? 本当に?」
正直に言おう。
自国で習ったことと、こちらで今聞いたことを思うと自身の身がもたないのではと、初めてのことに不安だったものが余計に不安が増したのは言うまでもない。
そんな私に、リーリヤ様はしっかりと教えてくれる。
「リカ、いいこと? 結婚したての竜人族の男はタガの外れた暴れ竜ですが、番に嫌われることだけは出来ません。無理だと思ったら、思いっきり泣いて訴えなさい。泣けば確実に止まりますから」
泣かないと止まらないって、どんな暴れっぷりなんですか?
私はすでに涙目になりかけていますが、でも結婚するのだから避けては通れません。
旦那様になるリヒャルト様にすべてを委ねると暴走は止まらないから、私が無理な時の対処法まで完璧に、しっかり隠さず教えてくれたリーリヤ様。
種族の違いを実感しつつ、的確に教えてくれたリーリヤ様と二コラの助言を胸に、私は大聖堂から抱えられたままに馬車も乗り、離宮まで帰ったのです。
本当に、リヒャルト様は片時も私を離しませんでした。
教え通りな行動に、これからを想像して少し身を固めてしまったのは、ばっちりリヒャルト様に伝わっていたのでした……。