余りもの王女は獣人の国で溺愛される
そうして過ごしたあと、王宮に戻るとリエナともう一人の侍女に手伝ってもらって大急ぎで晩餐用のドレスに着替える。
普段なら、このままでも自分一人での食事なら問題ないのだけれど、今日は週に一度の家族そろっての晩餐会の日。
親ではあるが、国王陛下や王妃様との食事となれば着替えが必要だった。
「ごめんなさいね、こんな日に出掛けて忙しくしてしまって」
私の言葉にリエナともう一人の侍女サーシャはにこやかに言う。
「どうってことはございません。私たちはマジェリカ様の侍女なのですから」
優しくもたくましく、優秀な侍女二人に私は感謝を伝える。
「いつも、本当によくしてもらっているわ。ありがとう」
本当なら、お兄様達かお母様に付いた方が出世には良いと思うのに。
この二人は私が幼少期から変わらずついてくれている。
「私たちの仕事にありがとうと言ってくださるのは姫様くらいですよ。そんな姫様に仕えられて私たちは幸せなんです」
サーシャも手を休めずに髪を結いながら答えてくれる。
本当に私は恵まれている。
王家の末っ子にして三番目の王女なんて、地位も高くないしもうそろそろ国内外でどこかしらに嫁がされるだけなのに。
急ピッチな支度にも関わらず、リエナとサーシャは綺麗に晩餐用王女スタイルに仕上げてくれた。
「じゃあ、行ってくるわ」
「行ってらっしゃいませ、姫様」
そうして、王宮の王家のプライベート用の食堂に着けば父である国王に正妃であるティアナ様、第一側妃のアラル様、そして私の母もすでに揃っていた。
そして、第一王子のアルジーノと第二王子アルバス、第三王子のライレスと兄三人も揃っていた。
いつもは仕事で遅い兄たちも揃っていて、最後になってしまったことに少し申し訳なさを感じる。
「遅くなり申し訳ございません。お待たせいたしました」
頭を下げて自分の席に向かうと侍従がしっかりと椅子を引いてくれたので、腰かける。
「マジェリカは今日は孤児院訪問の日だっただろう? お疲れ様」
優しく微笑んで声をかけてくれたのは一番上の兄、アルジーノだった。
「ありがとうございます、アルジーノお兄様。それでも、お待たせしてしまったので」
そんな私に、義理の母たちであるティアナ様やアラル様も微笑んで答えてくれる。
「マジェリカ。しっかり王族としての勤めを果たしているのですから、そんなにかしこまらなくても良いのです。この場は家族として共に過ごすためにあるのですから」
優しいティアナ様の言葉にアラル様も続けてくれる。
「えぇ。それに、今の王族では王女がマジェリカ一人なので負担も大きいでしょう? それでもしっかり勤めを果たしているのですから、もっと自信を持ちなさい」