余りもの王女は獣人の国で溺愛される
第六章
そろそろ蜜月期に入って一か月。
最短期間といわれる期間を、二人でゆったりと過ごしてきたがここにきて私の体調に変化が起きた。
それは三日ほど前からになる。
朝起きると、気持ち悪さが先にきて朝食があまり食べられない。
そして、落ち着いて食べるとその後は寝たはずなのに眠くて仕方がないのだ。
常に一緒の状態であるリヒャルト様も私の変化には気づいており、心配している。
さすがに三日続いたので、朝顔を出して準備してくれた二コラにリヒャルト様が声をかけた。
「二コラ。どうもリカの体調が思わしくないのだ。侍医を呼んでくれないか?」
三日目となった今朝は、とうとう何も食べていないのに朝から嘔吐してしまい、ルトは心配しっぱなしでいつもより早く二コラを呼ぶ鈴を鳴らしたのだ。
「まぁ、リカ様が? 確かにお顔の色が優れませんね。すぐに侍医をお呼びいたします」
そう告げると、二コラは部屋の前に待機している騎士に伝言を頼むと、片方の騎士が王宮へと向かってくれた。
最速移動のために竜になってすぐに行ってくれた。
「そういえば、マジェリカ様。蜜月の間に障りはありましたか?」
そんな二コラからの問いかけに、私とリヒャルト様は考えて、そうして気づいた。
「そういえば、この国にきてすぐの後はまだ来ていないわ……」
私の返事に二コラは頷くと、やってきた侍医に頭を下げつつ言う。
「エイゲルス侍医。マジェリカ様に到着前に聞きましたところ、障りが来ていないと」
二コラの言葉におじいちゃんな侍医であるエイゲルスは、とても嬉しそうに微笑むと私とリヒャルト様を見て言う。
「では、少し診させていただくかの」
言葉と共にかざされた手。
そこから光が当たると、少しの温かさを感じる。
光が収まった後に、エイゲルスはいう。
「まこと、めでたきことにございます。王弟妃様、ご懐妊にございます」
なんと、リーヤ様や二コラには異種族間だと授かりにくいかもと言われていたのに。
この蜜月期の間に、懐妊できるとは思ってもいなかった私とルトは驚いているが、だんだんと嬉しさが湧いてくる。