余りもの王女は獣人の国で溺愛される
「リカ、すごい! ここに私たちの子がいるのか」

 ルトは私のお腹に触れて嬉しそうに笑みを浮かべている。

「そうみたい。信じられないけれど、ルト様。嬉しい……」

 私は、もしかしたら授かれないかもしれないとまで言われていた。
 だからこんなにも早く懐妊したと、そういわれたことが嬉しくて仕方ない。
 気持ちが高ぶったからか、嬉しさに涙がこぼれてくる。

「リカ、これは嬉しさからだよね?」

 少し慌てた様子で聞いてくるルトに私は頷き答える。

「もちろん、嬉しくて。だって、ルトとの子を授かれたんですよ」

 ギャレリアには多くはないが、人族を番に迎えた獣人族はいる。
 獣人族のほうが血が強いのか、だいたい獣人族の特徴を持って産まれるといわれるが、人族と獣人族の間の子は少ない。
 獣人同士より、出生率が低いのだと聞いた。
 そのため、異種族婚の夫婦は番と二人で生涯を終えることもあると聞いた。
 これは歴史、文化の時間で聞いたこと。
 その覚悟もありつつ、もしも恵まれたらという少しの期待。
 まさか、こんなに早く授かるとは私もルトも思っていなかった。
 蜜月期を終えて、長い夫婦生活の中でいつか授かれたら幸せだねと、体調不良になる前に話したばかりだったのだ。

「あぁ、こんなに幸せで……。リカ、私たちは幸せ者だな」

 膝にのせて抱きしめたままにいうルトに私も寄り添いながら、同意する。

「えぇ、こんなに早く私たちのもとに来てくれるなんて。幸せですね」

 しかし大変なのはここからだった。
 蜜月期は懐妊によって終わりを迎えたが、番が子を宿したことによりルトは大変な番への超過保護期に入ってしまったのだ。

 蜜月期以上にべったり、離れない。
 仕事場へも行かないままに、仕事を離宮へと運ばせる始末。

 これ、大丈夫?と二コラに聞くと大丈夫という。

「獣人族の男性は番が妊娠すると、出産するまで守るのが最優先になるのでこの状態はギャレリアでは一般的です」

 なんと、これ一般的なんですか?!

 種族と国が違うと、いろいろ違う……。

 そんなわけで、過保護にされる妊娠期間に突入したのだった。


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