余りもの王女は獣人の国で溺愛される
「これは、竜人族では一般的なので問題ございません。出産自体も卵生は母体への負担も軽く、異種族間では卵生が多いのですよ。そして、生まれる姿は竜体になります」
そうか、どんな色の竜になるのだろう。
今から少しだけ楽しみで仕方ない。
「あぁ、とても楽しみだね。あと一か月でこの子は外に出る。今もめまぐるしい成長を遂げているはずだよ」
私のおなかを撫でて、ルトは本当に嬉しそうに話す。
「えぇ、そうですよ。すでに卵生であれば外の音も聞こえているはずです」
エイゲルスの説明に驚きを隠せない。
すでに外の音まで届いているなんて、とても成長が早い。
「お父様も、私もあなたを楽しみに待っていますからね」
ルトが添えていた手に、自分の手も重ねてお腹に話しかける。
すると、お腹の中でぐにゅっとした動きを感じた。
それは同じくお腹を触っているルトにも伝わったようで、二人で顔を見合わせて笑みを浮かべる。
「お子は大変順調に成長されているようですな。お二方に早く会いたいと、この子は卵生を選んだように感じます。さて、出産まではもう少しなので、適度に運動も大事です。リヒャルト様、マジェリカ様にもしっかり歩いてもらってくださいね」
侍医に自力で歩くことを推奨されたので、私はこの後出産までなんとか毎日自力での散歩の権利を獲得したのだった。
もちろん、ずっとべったりなので自分で歩いていても隣にはばっちりルトがいたけれど。
いい運動と、気分転換になった。
そうして仲良く二人で過ごしながら、一か月後。
朝起きると、私とルトの間に一つの卵が鎮座していた。
なんと、全く気付かず寝ている間に私は出産を終えていたらしい。
全然痛みもなかったのに、人族との出産と余りに違いすぎてポカンとしたのは言うまでもないが、この朝からお部屋でルトが我が子の温めに入ることになり外交官としての仕事が完全にストップすることとなった。
こうして、予想よりはるかに早く子育て期間へと突入するのだった。