余りもの王女は獣人の国で溺愛される
サーシャはこちらの声が聞こえているアクアリーテに、連れ去ることを詫びた。
「アクアリーテ様、本当にごめんなさい。このままではシエラが売られてしまう。それだけは……」
そう、思いつめたサーシャの声を聴きアクアリーテはすでに明日には出る予定だった孵化を速めて、密漁団から脱出したのだという。
どれだけ小さくとも竜人族の子。
生まれながらに高魔力を保持し、魔法も扱うことができたアクアリーテには脱走などたやすいことだった。
それを聞いて、一気に脱力したのは言うまでもない。
こうして、誘拐にしては運よくあっという間に解決したが私の侍女が起こした事件。
そのため、サーシャは解雇。
家族と共にマテリカへと戻った後は、マテリカから他国への追放になるだろうと言われた。
サーシャは二年前に私付きになった、新しい侍女だった。
年も近く、嫁ぎ先までついてきてくれたことに嬉しさもあった。
すべては密漁団のせいとはいえ、やるせなさが残った。
しかし、それだってアリーが無事だったからこそ思えること。
私は陛下とルト、わが国マテリカの王たる父の決定に従う。
そうして、私の侍女は一人減り二コラ選定でギャレリアの貴族子女であるミアリーが新たに加わったのだった。