余りもの王女は獣人の国で溺愛される
第七章

 誘拐事件も、早々と解決しアクアリーテが誕生して一か月と少し。
 新しい侍女のミアリーも私たちの離宮に慣れてきた。
 やっと穏やかになり、過ごしていたときにまた変化の兆しが起こる。

 朝起きてベビー用のかごの中で丸くなってたアクアリーテが、かごの中で人型の幼い子どもの姿になっていたのだ。

 その髪は綺麗な水色。
 小竜の姿の時の水色の鱗そのものの髪の色に、私は人型になってもアクアリーテだと分かった。

「アリー、おはよう」

 私の声に、かごの中のアクアリーテがムズムズしながら起きてくる。

「おかあさま、おはよう」

 起きたアクアリーテはまだ、自分が人型になっていることに気づいていない。
 可愛らしい、その瞳は私の色と一緒だった。

 私の瞳の色はどこにでもある蜂蜜のような琥珀色なのだけれど、アリーの水色の髪に琥珀色の瞳はとっても可愛い。

 一緒に寝ていたルトも起きてみてアリーの姿に驚いている。

「アリー、もう人型になったのかい?」

 そんなルトの問いかけに、アリーはあっさりとした一言を返す。

「だっておとうさまはアリーを抱っこ出来るし一緒に飛べるけれど、おかあさま最近アリーの抱っこ大変そうにしていたから」

 卵から孵った後は一年くらいでそこそこ大きくなるし、飛べるようにもなる。
 飛行が安定するころに人型になるから、生まれて一か月ちょっとで人型になるのは竜人族でも異例の速さだという。

 ただ、竜人族はその成長速度も速くどのような生まれ方でもすぐに意思疎通出来るし、竜型でどんどん成長して一年経たずに飛べるし、人型にもなれる。
 幼児から少女くらいには五年で成長してその後は緩やかに成人まで成長するのだとか。
 人間の感覚とはかなり違うので戸惑うことも多いが話ができるのはかなり助かる。

 人間の赤子と違って要求がしっかり言語化されるので、お世話の難易度が段違いなのだと思う。
 お腹すいたも、おしめが不快なのも言葉で伝えてくれるから。
 おかげで新米お母さんの私でも、乳母なしでお世話できているのだ。

 しかし、問題はあった。
 竜体での成長が早く、生まれてすぐからの一か月でサイズ感も重さも倍になっていた。
 正直、私では抱っこが大変になっていたのだ。
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