余りもの王女は獣人の国で溺愛される
そんな義母たちの言葉に、少し恐縮して返すのは私の母エミーシャだ。
「もったいなきお言葉、ありがとう存じます」
母の言葉に合わせて私も頭を下げた。
そこに、父がコホンと一つ咳ばらいをすると言った。
「さぁ、みんな揃ったし食事としようじゃないか」
そんな父の一言で給仕たちが動き出し、食事が始まる。
王宮での家族の晩餐は、夜会等に比べれば質素倹約だ。
王族と言えど、民の納税で暮らしているという父の考えの元、普段はつつましやかな食卓になっている。
コース料理などではなく、サラダにパンにスープと肉料理か魚料理が一品付くものだ。
それだって、きっと贅沢なのだろうけれど……。
私の暮らしは産まれた時から、この暮らしなのだ。
市井や、ほかの貴族の暮らしは知らない。
しかし、この生活も残りは少ないだろう。
姉達が嫁いでいった年齢にそろそろ私も差し掛かる。
だから、そろそろ結婚の話が出てくると思っている。
マテリカ王国の貴族の女性の結婚適齢期は十七歳から十九歳。
私は今、十八歳になったばかり。
しかし、産まれた時から婚約者のいる貴族や幼少期からの婚約も多いのに、私にはいまだに婚約者はいない。
兄三人には婚約者がいるし、王太子であるアルジーノお兄様は三か月後には結婚式を控えている。
「父上、ギャレリア王国の使節団訪問の日程が決まったそうですが?」
ライレスお兄様が父とアルジーノお兄様に問いかけると、父が頷いて答えた。
「急ではあるが、三日後に使節団の訪問が決まった。その日に歓迎の宴を行うのでライレスは騎士団長と共に王宮の警備計画を」
それに兄が頷くと、父は私やお母様たちを見つめて言った。
「歓迎の宴は王族揃って行いたいので、そなたたちも歓迎のための準備を頼む」
そんな父からの発言で、その後は食事しつつも歓迎の宴についての話が場を占めつつ、食事の時間は終わったのだった。
自室に戻り、リエナに手伝ってもらい入浴と寝支度を済ませて長い一日を終えた。
明日からは使節団受け入れの準備で忙しくなるだろう。
慌ただしい城内で、私はその間王女宮で準備をしつつも花嫁修業的に家庭教師から授業を受けていた。
今回はギャレリア王国の使節団に合わせて、ギャレリア王国についてもう一度学んだのだった。
そうしてあっという間に、使節団訪問の日を迎えたのだった。