余りもの王女は獣人の国で溺愛される
「そうか、アリーはリカの抱っこが好きだから、いっぱい抱っこしてほしくて人型になったんだね」

 そんなルトの言葉にアリーは満面の笑みで頷いて答えた。

「うん。アリー、ママの抱っこ大好き。だからいっぱい抱っこしてほしくてアリー、ママと一緒になればいいと思った」

 そんなこんなで、一気に一か月で人型になる異例の成長過程を見せたアリー。

 しかし、皇帝一家もアリーの言葉を聞けば納得らしく祝福を受けて、きれいなお洋服がたくさん作られた。

 竜体では服は必要なかったけれど、人型ではそうはいかないものね。

 そうすると、可愛らしいアリーに何を着せようかと服を選ぶのが楽しくて仕方ない。
 そんな私をルトも楽しんでおり、ルトに至っては私とアリーにおそろいの服を仕立てたりしているし、離宮の侍女やメイドたちもお世話を楽しんでくれている。

 そうして家族としての生活が落ち着いてきたころ、ルトに再び外交の予定が入る。

 マテリカとの街道が出来上がり、行商などのやり取りが本格化する前の街道開通記念式典をマテリカ側で行うことになったのだ。

 急ピッチで進んだ街道工事は、私が蜜月期間には道のための山の伐採が終わり、アクアリーテが卵の間に整備が始まり、三か月の工程で完成した。
 竜人族ならではのフットワークと怪力による作業と、魔法による綺麗な整備の速さのおかげだという。

 この街道整備の速さと、すでに第一子であるアクアリーテが誕生したことにマテリカでは驚きと共にお祝いムードでもあるという。

 人族である私とルトの間にこんなに早く子宝に恵まれることは両国の友好を歓迎しているのだろうと、どちらの国にも大変喜ばれている。

 しかも、リン皇女は従妹であるアリーとは五歳違い。
 本当の姉妹のように仲良く過ごすことも増えている。

 特に、こんなに早いうちに人型になった子はいないのでみんな抱っこをしたがった。
 幸いにも、アリーは人見知りしないのでたくさんの人に抱っこしてもらっている。

 特にやはり親である私やルトの抱っこは大好きで、ほんの少しあやすためにゆすっていると寝てしまうほどに安心してくれる。
 その姿は可愛くてたまらない。
 そんな我が子を、父や母、兄たちに見せたいとは思うがこんな小さな子を空の旅高速飛行で三時間のマテリカにはまだ連れて行くのは早いと思っていた。
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