余りもの王女は獣人の国で溺愛される
「いや、せっかくの両国の交易路の開通式典だろ?向こうも国王が出てくるのにこちらは王族とはいえ外交官だけではなと考えたのだ」

という、至極真っ当な陛下の言葉にルトがすんなり納得する訳もなく……。


「して、真なるその心は?」

と冷ややかに返すので、私はハラハラと見守る。

「リンの長距離単独飛行訓練を兼ねた式典参加だな!」

潔いほどに、陛下も我が子優先である。


「リンもそろそろ1人で飛べるはずだし!いい訓練だし、リカ様の故郷も見てみたいから!」

リン姫本人もこの調子なので仕方ないのだろうか。

こうして、記念式典に両国王族が揃うというとっても大変な事態になるのだった。

主に、両国の警備担当者たちへの負担という所が。

竜人族が揃っていればそれこそ、害を与えることなど出来ようはずもないのだが。

ここは、式典として他国の賓客も来る予定となっているので警備は厳重にすることが両国間で決まったという。

つい先日もアリーが誘拐されたこともあり、マテリカ側も厳重にする事を許可し、ギャレリアの獣人騎士団が派遣されることになった。

獣人騎士団はそれこそ竜人族以外にも虎人族や豹人族、狼人族に熊人族など多様な獣人で構成されており、パワーも動きも人族以上の集団。

空からの警戒には鷹人族などの鳥の獣人たちも加わり万全の体制にするとのこと。


一安心の環境を残り2日で整えて、出立できるギャレリアの騎士団の有能さが垣間見えた。

そして、陛下のお針子たちも3日で国王陛下家族の衣装を仕上げたので。
出立のお見送り時は大変な様相だった。

2日ほどはゆっくり休んで欲しいと思う。

これも基礎体力の桁が違うから出来る、獣人族ならではの荒業だわと私は感心しきりだった。
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