余りもの王女は獣人の国で溺愛される
そんな両国の中で一番先に我を取り戻したのは、ギャレリアの補佐官と紹介されたルーアンさんだった。
「リヒャルト様、もしやと思うのですが……。彼女は……」
ルーアンさんの問いかけに、リヒャルト様は一つ頷くと言った。
「早急にマテリカ王国とは国交樹立せねばならない。それと、重要な議題がもう一つだ」
リヒャルト様の返事にルーアンさんはモノクルを直して一つ頷いたのち、マテリカ王国側の現在のトップたるアルジーノお兄様に言った。
「国交は、早急に整えたく思います。また、それ以上に重要な議題が出来ましたので、話し合いの場へと案内をお願いします」
アルジーノお兄様はその声掛けに、スッと背筋を伸ばすと答えたのだった。
「かしこまりました。国王は既に話し合いの場に居ることと思います。ご案内します」
お兄様達二人が先導してそのあとにギャレリアの使節団の三人。
その後に事務官が続き私は最後に自身の侍女リエナに着いてきてもらう。
「どうやら、国交は樹立できそうで良かったわね」
そんな私の感想に、リエナは少し不安そうな顔をした。
「でも、なにやらほかにもお話がありそうなご様子でした。マテリカが、不利になるようなことにならねば良いのですが……」
リエナの言葉に私は、少し考えてから返す。
「まぁ、なんとかなるのではないかしら。陛下もお兄様達もそうそうやわではないし、おかしな国交樹立ならそれを断る位の気概はあるはずだもの」
しかし私の予測は全く宛てにならず、この日の歓迎の宴でものすごい事態の中心に据えられることとなる。
会議場に行く面々とは別れて、私は会議の後の宴の準備のために一足先に王女宮へと戻るのだった。