余りもの王女は獣人の国で溺愛される

「そして、その国交樹立の恩恵はどうやらマジェリカに掛かっている」

 その言葉に私は周囲の家族を見回した後に父を見て、そして聞いた。

「それは、私がギャレリアへ嫁ぐということでしょうか?」

 話の運びからして、それしかないだろう。
 私は特段、驚くでもなくこの話を受け止める。
 元々、そろそろどこかしらに嫁ぐ話が出ることは明らかであったからだ。
 年頃の王女の結婚はいい話がくれば、早急に話がまとまることもある。
 ミリアお姉さまのように、国内の公爵子息に見染められて降嫁するのは稀だけれど。
 外交が上手くいくように他国の高位貴族に嫁いだ第一王女レイラお姉さまもいたので、自分の結婚の話もそのうち国がらみで出るのではと思っていた。

「ギャレリア王国が、結婚による結びつきを望んでおられるのなら私は嫁ぐことになんら否やはございません。マテリカ王国に良き方に向かうのであれば、嬉しいですから」

 私の言葉に、アルジーノお兄様が渋い顔をして言う。

「本当に、マジェリカは現実的というか……。王女で末娘なのだから、我がままに育ってもおかしくないのにね。そんな真面目で現実的なマジェリカにとっては、この結婚は幸せになれると思うんだが……」

 少し、言葉を迷っているアルジーノお兄様の後を引き継いでアルバスお兄様が言った。

「どうやら、出迎えに行ったマジェリカを見てリヒャルト様が気に入ったらしいんだよ。それで、宴の際にはぜひ話をさせてほしいと言われている」

 どうやら、あの場でも少し騒然としていたがその違和感はそのまま宴に持ち越しとなった様子。

「分かりました。宴にてリヒャルト様とお話させていただきます」

どうやら、私は新しく国交を結ぶ国へと嫁ぐことになりそうだと覚悟をした。
これは政略結婚なのだろうと、結婚は形だけか義務だと私は獣人について学んでいたのに、この時はすっかり忘れていたのだ。

獣人の特性とその伴侶のあり方選ばれた人の過ごし方などを……。



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