君を守るのは僕の仕事
「おう、もっと感謝しろ!」
「なんか言ったら損した気分ー。
…でもさ、本当にありがとね。
あきのおかげ。」
高校に通いながら、
子育てして、
できるだけ親のスネをかじりたくないからって私のわがままが通るのはあきのおかげ…。
中学生で子どもを産むなんて、
どれだけ周りが批判したか。
それでも高校だけは行けって言ったお父さん。
やってやる!
って気持ちだったのに、現実は甘くなくて…。
高校入るのだってあきが勉強を教えてくれたおかげだし、
家事分担もだけど空を寝かしてからバイト中はあきが見てくれてるから…。
私1人じゃ出来なかった。
あきがいてくれたから…。
「海智…。」
考えてたら、いつの間にかあきが私の横にいた。
私をみるあきの目はまっすぐで…。
「あき…ごめんね…」
「言ったろ?海智も空も、俺が守ってやるって。」
あきの手が、私の頬に優しく触れた。
私の全てを見透かしたような目。
細長い指。
でも触れたと思ったらスッと離れてしまった。
「ごめん、慰めようとしたらつい…。」
私の頬にふれた手を反対の手でおさえた。
「「……」」
「ママー!手あらったよー!」
沈黙は空の元気な声で破られる。
「あきちゃん!あきちゃん!今日おふろいっしょ、ね!」
「ママと入ろ?あきばっかりズルい。」
「やだ!あきちゃんがいいもん!」
最近、空は本当にあきとお風呂に入るのを楽しみにしてる。
そんな息子にヤキモチだわ。
「空、お箸並べて。海智も座ってないでご飯つぐ!」
「「はーい」」
「海智、食器割るなよ?」
「割らない“ガシャーン!!!”
?!あ…、割れた…」
「ほら言わんこっちゃない。
空、またママがドジしたから待機な。」
「りょーかいです!」
「海智はガラス拾うなよ?
ぜってー怪我すっから!!」
「はい、ごめんなさい…。」
でも私のミスなのに…
破片に手を伸ばすと、
「いた!!!」
足にズキっと痛みが走る。
「何やってんだバカ!」
あきがすぐにかけつけて、そそくさとガラスの破片を片付け、
私を抱え上げてソファに座らせた。
「このバカ海智!ドジ!」
「ご…ごめんなさい。」
「ママズルいー!あきちゃんくうも抱っこしてー!!」
怒ったあきは怖い、かなり…。
「見せてみろ。」
恐る恐る、そーっと足を差し出す。
なんて言うか…
「恥ずかしいんだけど…。」
「なに?」
「な、なんでもない!!!」
手際良く消毒やらしてくれてるあき。
なんか、顔が熱くなってきた。
「ママ?顔赤いよ?熱あるの?」
「き、気のせいだよ!」
目を合わせてくれないあき。
今、顔を見られたくないからよかった…。
「はい。終わり。空、ご飯食べるぞ!」
「わーい!あきちゃん抱っこしてね!」
「はいはい。」
一度も目を合わせてくれなかった…。
ドジすぎて見限られたとか?
空を抱っこするあきを見ながら、
あきにはこれからこうやって家庭を持って幸せに暮らすんだろうな、
その時も仲良くしてくれるかな、
そう思った。