【完結】年上御曹司と始める幸せお見合い結婚


「梓さ……」

 え……? 

「あずくん……。わたし、やっぱりまだ、あずくんのことが好きなの……。お願いだから、やり直して欲しい」

 目の前にいるのは、確かに梓さんだ。間違いない。梓さんだ。……だけど、隣にいるのは誰?

「……流奈(るな)、ごめん。 俺はもう、流奈とはやり直せない」

 流奈……?

「なんで……。どうして? どうしてなの、あずくん……!」

「俺、もうすぐ結婚するんだ」

「え? 結婚……?」

 わたしはそのふたりのやり取りを、遠目から見ていた。……だけど、足が動かなかった。その場から動きたかったのに、動けなかった。

 あの人は誰? そう言いたいのに、言葉が出なかった。今目の前にいるのは、大好きな梓さんだ。なのに梓さんの隣に今いるのは、わたしではなく、別の人だ。

「俺、今はその女性と付き合ってる。結婚を前提に。 だからもう俺は、お前とは戻れない。ごめん、流奈」

「なんで?どうして……」

 涙をボロボロと流す流奈さんという女性。だけどその女性は、梓さんの服の袖を掴んだまま離れようとはしなかった。
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