【完結】年上御曹司と始める幸せお見合い結婚
「あずくん……」
「流奈、俺は……」
その瞬間、わたしの目の前で流奈さんは梓さんの服を引っ張ってキスをした。
「……っ!」
えっ……。
「な、何するんだ流奈!」
慌てて流奈さんから離れた梓さんだったけど、その瞬間にわたしに気付いたようだった。
「……っ! 美鈴……?」
梓さんはわたしの方に視線を向けていた。わたしはそんな彼の視線から目を逸らした。 そして、背中を向けて慌てて走り出した。
「美鈴っ……! 待ってくれっ!」
そんなわたしの後を追いかけてきた梓さんは、わたしの腕を掴んで引き止めた。
「美鈴! 待てって……!」
「……は、離してください」
「聞いてくれ、美鈴。頼むから」
そう言った梓さんの言葉に、わたしは「……何も聞きたくないです」と答えた。
「美鈴……。ごめん」
そんなわたしに、梓さんは申し訳なさそうに謝った。
「……ごめんって、どうして謝るんですか?」
だって梓さんは、悪くない。悪くないから、謝る必要がないのに……。
「だって俺、美鈴の前で、あんな……」