閉じこめた、旋律。
課題曲は、バラード第一番。
私の、大好きな曲。
鍵盤を撫でるあの感触が好きで、
起伏を描くショパンが大好きで。
そうだ。
初めてショパンを弾いたのは
小学三年生の冬のことだった。
クリスマスに
なんて事ないホテルで弾いた、
「ノクターンOP9-2」。
家がそこまで裕福でもないから
私が普段弾いているのは
そこら辺に売っている電子ピアノで。
だからこそ幼い私は、
グランドピアノで曲を弾くことが
誇らしかったように思う。
誰かの耳に私の音が響いて
私のピアノに賭ける小さな音を感じて
「綺麗な音」
そう呟く誰かの声を聞くのが好きだった。
1階でそれを弾く私を
2階に居た小さな女の子が
聞いていてくれたことが嬉しかった。
あの日、女の子は言った。
「頑張ったらお姉ちゃんみたいに弾けるようになる?」
私は
「なれるよ。ピアノが大好きになれればね」
そう言って笑った。
その後女の子と一緒にきらきら星を連弾して