私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。
翼が聖威に向けてボソッと呟く。
「……」
聖威は、短く首を横に振る。
「……わからない。さすがに術の綻びは感じ取れない。ここからじゃ距離もあるし」
「舞空は?どう思う?」
銀太さんは私にも伺ってきた。私も聖威と同じく首を横に振る。
「わ、私もわかりません……あれが韋駄天様の偽物なのか、どうか。本物といえばそうだし、偽物と言われればそうなのかも」
「というと?」
「見た目は本当、韋駄天様そのものですが……韋駄天様は豪快で冗談もお好きです。しかし、今の辞を述べるお姿は、何ら普通だった。本物の韋駄天様ならご冗談のひとつも述べて場を和まそうともしそうですが……やはり、公式の場なのでそうもいきませんし」
違和感があるといえば、ある。
しかし、場が場なのでそれは仕方ないのかもしれない。
私が今の韋駄天様を見た印象の答えは、こうだった。
「うーん。判断材料にはならないなぁ」
「じゃあ、もう少しこの会場に残って観察しよう。時間が経てば、僅かな術の綻びを感じることが出来るかもしれない」
「了解」
聖威の指令ともいえる一言に、翼と銀太さんは頷く。
私もつられて、一緒に首を縦に振った。